SEM解析でわかること ~FE-SEMによるめっき・表面処理の不具合解析~
めっきや表面処理の不具合は、外観観察だけでは原因を特定できないことが少なくありません。
「剥離した」「腐食した」「変色した」「ピンホールが発生した」といった現象が確認できても、その原因は皮膜内部や素材との界面、あるいは微細な異物や欠陥にある場合があります。
このような不具合解析に有効な分析手法がSEM(走査電子顕微鏡:Scaning Electron Microscope)です。
当社では、一般的なSEMよりも高分解能な観察が可能なFE-SEM(電界放出形走査電子顕微鏡:Field Emission Scanning Electron Microscope)を用いて、めっき皮膜や素材の表面・断面を詳細に解析しています。
FE-SEMとは
FE-SEMとは、電子源に電界放出型電子銃(Field Emission Gun:FEG)を採用した走査電子顕微鏡です。
一般的な熱電子銃SEMに比べて電子ビーム径が細く、明るさ(輝度)が高いため、
- 高倍率でも鮮明な画像が得られる
- ナノメートルレベルの微細構造を観察できる
- 微小な欠陥や異物も明瞭に観察できる
- 微小領域の元素分析(EDX)との相性が良い
という特徴があります。

めっきや表面処理では、「見えない不具合」を可視化するための重要な分析装置として活用されています。
FE-SEM解析でわかること
1.めっき皮膜の断面構造
断面試料を樹脂埋め・研磨した後にFE-SEMで観察すると、
- 皮膜厚さ
- 膜厚の均一性
- 多層めっきの積層構造
- 界面状態
- ボイド(空隙)
- クラック
- 剥離位置
などを詳細に確認できます。
膜厚計では測定点の膜厚を把握できますが、FE-SEMを用いた断面観察では膜厚のバラつきだけでなく界面状態や内部欠陥まで評価できます。
2.剥離・密着不良の解析
剥離が発生した場合には、
- どこで剥離したのか
- 剥離界面に異物があるか
- 界面に空隙があるか
- めっき層内部で割れているか
などを確認できます。
例えば、素材-めっき界面では、
- 前処理不足
- 活性化不足
- 酸化膜
- 異物介在
などが疑われます。
一方、めっき層内部では、
- 内部応力
- 浴管理
- 添加剤バランス
などが影響している可能性があります。
FE-SEMでは剥離位置を明確にすることで、原因究明の方向性を絞り込むことができます。
3.ピンホール・微細欠陥の観察
FE-SEMは微細欠陥の観察を得意としています。例えば、
- ピンホール
- 微細空隙
- 表面欠陥
- めっきムラ
などを高倍率で観察できます。形状や内部構造を確認することで、
- ガスの影響
- 異物の混入
- 前処理由来の汚染
- 素材中の介在物
- 鋳巣
などの可能性を推定することができます。
4.クラック(割れ)の解析
クラック断面では、
- 割れの起点
- 進行方向
- 加工応力
- 水素脆性
- 密着不良
などの関連を推定できます。
5.腐食解析
腐食部をFE-SEMで観察すると
- 腐食開始位置
- 腐食進行方向
- ピンホールとの関係
- 界面腐食
- 腐食生成物の分布
などを確認できます。
腐食がピンホールから始まったのか、界面から進行したのか、素地まで到達しているかなどを把握することで防食性能や皮膜欠陥との関係を評価できます。
6.異物解析
異物解析はFE-SEMが最も活躍する解析の一つです。例えば、
- 黒点/白点
- シミ
- 微粒子
- 汚染物質
- めっき異常部
などを詳細に観察できます。異物の形状や付着状態から、
- 工程由来
- 外部由来
- 腐食生成物
- めっき析出物
などを推定できます。
7.素材欠陥の確認
めっき不良と思われていた現象が、実際には素材起因であるケースも少なくありません。FE-SEMでは、
- 鋳巣
- 介在物
- 加工傷
- 偏析
- 微細割れ
などを観察できます。素材欠陥を確認することで、工程側か素材側かの切り分けが可能になります。
8.変色解析
変色部では、
- 表面粗さの変化
- 腐食の発生
- 微細な付着物
- 腐食生成物
- 表面形態の変化
などを観察できます。変色そのものをFE-SEMだけでは判定することはできませんが、後述するEDX分析と組み合わせることで変色原因の推定精度が向上します。
FE-SEMを使用するメリット
一般的なSEMと比較して、FE-SEMには次のようなメリットがあります。
- ナノメートルレベルの微細構造まで観察できる
- 高倍率でも高い解像度を維持できる
- 微細なピンホールやクラックを鮮明に観察できる
- 微小異物の観察に優れる
- 微小領域のEDX元素分析に適している
- 微細なめっき組成や表面形態を評価しやすい
めっき・表面処理の故障解析では、微細な欠陥を見逃さないことが重要であり、FE-SEMの高分解能性能が原因究明に役立ちます。
EDX(エネルギー分散型X線分析)との組み合わせ
FE-SEMは形状や構造を観察する分析手法です。一方、EDXを組み合わせる事で、観察した箇所の元素組成を分析できます。
例えば、酸素(O)、塩素(Cl)、硫黄(S)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)などの元素分布を確認することで、腐食や異物の発生要因を推定できます。
FE-SEM解析の活用例
| 不具合 | FE-SEMで確認出来る内容 |
|---|---|
| 剥離・密着不良 | 剥離位置、界面状態、異物の有無 |
| ピンホール | 形状、内部構造、発生要因の推定 |
| クラック | 起点、進行方向、深さ |
| 腐食 | 起点、進行方向、腐食形態 |
| 変色 | 表面状態、腐食、付着物の観察 |
| 膜厚不足 | 断面膜厚、均一性 |
| 白点/黒点/シミ | 異物、素材欠陥、皮膜異常 |
| 素材不良 | 鋳巣、介在物、加工傷 |
FE-SEM解析をご検討の方へ


めっきや表面処理の不具合は、外観観察だけでは原因を特定できないことが多くあります。
当社ではFE-SEMによる高分解能観察とEDXによる元素分析を組み合わせ、剥離、密着不良、腐食、ピンホール、変色、異物付着など、様々な不具合の原因究明をサポートしています。
また、断面試料の作製から観察、元素分析、解析レポートの作成まで一貫して対応しています。
「原因がわからない」「再発防止につなげたい」とお考えの場合は、お気軽にご相談ください。
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