無電解ニッケルめっき
無電解ニッケルめっきとは
無電解ニッケルめっきは、電気を使わず化学反応のみで金属表面にニッケル合金のめっき層を形成する技術です。電流が届かない絶縁体や樹脂コーティング上にも処理が可能で、導電性の無い素材や複雑な形状にも均一な厚みで対応できます。高い密着性と精密な仕上がりが特徴です。
無電解ニッケルめっきの反応式
電解めっき(電気めっき)のように陽極・陰極を設定する電気回路がないため、「陽極」「陰極」という区別はありません。
無電解ニッケルめっきでは、還元剤(化学還元剤)が使われます。
この場合、還元剤=次亜リン酸塩(H₂PO₂)が一般的です。
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ニッケルの還元反応 Ni₂+2e¯→Ni 還元剤(次亜リン酸塩)の酸化反応 無電解ニッケルめっきでは、「電気を使わず、次亜リン酸を還元剤として、ニッケルイオンが還元され析出」します。 |
無電解ニッケルめっきの熱処理による皮膜硬度の変化
無電解ニッケル皮膜を硬くする場合、「熱処理」が有効な手段となります。
ただし熱処理条件によっては(特に大気中で300℃を超えると)変色リスクが高くなります。
外観を問われるサンプルについては熱処理温度にご留意ください。
※250℃ほどから、Hvが急激に上がる。
無電解ニッケルめっきの特徴
無電解ニッケルめっきは、ニッケルの中に数%のリンを含有し、その外観はわずかに黒味がかったにぶい光沢のある銀白色を呈します。均一付着性・耐摩耗性及び耐食性に優れ、非磁性のものもあり、また、硬さはHv450~550です。
めっき後、熱処理を施すことにより硬さを向上(約Hv500~1000)させることができるが、耐食性はやや低下し、条件によっては磁性を生じます。
| 1.電気不要。電源が不要で、電流分布の影響を受けず均一な膜厚が形成可能。 |
| 2.複雑形状に強い。細かい穴や内径、凹凸部にも均一にめっきができる。 |
| 3.硬度・耐摩耗性。リン含有量に応じて、硬度(Hv500〜1000程度)が高い。 |
| 4.耐食性。リンの含有量により耐食性が大きく向上→P10パーセント以上 高リン。 |
| 5.はんだ付け・接着性:下地めっきとして使われることが多い(特に銅やアルミの表面処理)。 |
| 6.熱処理対応。めっき後に熱処理を行うと、さらに硬度・耐摩耗性がアップ。300℃以上でHv1000以上可能。 |
無電解ニッケルめっきのメリット・デメリット
| メリット | ・形状に依存せずに均一膜厚を形成できるため、複雑部品に適用可能 ・耐食性 / 耐摩耗性 / 硬度が高く、機能部品に最適 ・リン含有率により皮膜特性を自在に調整可能 ・非磁性皮膜も形成可能で電子機器に適応 |
|---|---|
| デメリット | ・めっき浴管理が繊細であり、化学平衡の維持に高度な管理が必要 ・前処理不良や汚染により皮膜欠陥が生じやすい |
無電解ニッケルめっきの設備
手動ライン
自動ライン
自動ライン
半自動ライン
黒坂鍍金取扱い 無電解ニッケルめっき 種類
| 処理ゾーン | ライン種 | Niめっきタイプ | 対応材料 | 最大処理サイズ |
|---|---|---|---|---|
| 3ZONE | 自動 | 中高リン | Al | 800mm×600mm |
| 5ZONE | 自動 | 中高リン | Fe,SUS | 600mm×800mm |
| 7ZONE | 手動 | 中リン | Fe,SUS,Al,Cu,真鍮 | 400mm×600mm |
| 7ZONE | 手動 | ポロン | Fe,SUS,Al,Cu,真鍮 | 400mm×400mm |
| 7ZONE | 手動 | PTFE | Fe,SUS,Al,Cu,真鍮 | ビーカーワーク |
無電解ニッケルめっきの対応処理種
| 処理種 | 低リン | 中リン | 中高リン | 高リン | DMAB | PTFE含有無電解 Ni-P |
黒色無電解 Ni-P |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| リン含有率 | 1~4wt% | 8~10wt% | 10~11wt% | 11~13wt% | B:0.2~1.0 | 8~10wt% | 8~10wt% |
| 結晶構造 (熱処理なし) |
結晶質 | 非晶質 | 非晶質 | 非晶質 | 結晶質 | 非晶質 | 非晶質 |
| 結晶構造 | 結晶質 | 結晶質 | 結晶質 | 非晶質 | 結晶質 | 非晶質 | 非晶質 |
| 硬度(Hv) | 700 950 |
550 950 |
530 950 |
500 950 |
780 1000 |
300 550 |
300 550 |
| 耐摩耗性 | 良好 | 普通 | 普通 | 普通 | 良好 | 良好 | 普通~良好 |
| 密度 (g/cm³) |
8.5 | 7.9 | 7.9 | 7.6 | 8.6 | 6.6 | 6.6 |
| 比抵抗 (μΩ・cm) |
30~60 | 60~75 | 60~75 | 150~200 | 5~6 | 180 | 180 |
| 耐酸性 | 劣る | 普通 | 普通~良好 | 良好 | 劣る | 普通 | 普通 |
| 耐アルカリ性 | 良好 | 普通 | 普通 | 普通 | 劣る | 普通 | 普通 |
| 耐食性 | やや劣る | 良好 | 良好 | 普通~良好 | 劣る | 普通~良好 | 普通~良好 |
| 皮膜光沢 | 普通 | 良好 | 普通~良好 | 普通 | 普通 | やや劣る | 普通 |
| 材質 | アルミニウム、鉄鋼系、銅・銅合金 | ||||||
無電解ニッケルめっきの用途・事例
自動車・鉄道
航空機・船舶
化学機器
電気モーター
印刷機
石油採掘
軍事関連
織物
電気
樹脂
電子部品
ハードディスク部品
無電解ニッケルめっきの用途別求められる特性
| 分野 | 求められる特性 | 無電解Niめっきの適用箇所 |
|---|---|---|
| 自動車 鉄道 |
・耐摩耗性 ・耐食性 ・硬さ ・はんだ濡れ性 ・皮膜の均一性(寸法精度) |
・ヒートシンクピストン ・エンジン軸受 ・連結器 ・ギア ・ディーゼルシャフト |
| 航空機 船舶 |
・耐摩耗性 ・耐食性・ ・硬さ ・皮膜の均一性(寸法精度) |
・エンジン(整備)部品 ・支柱 ・ギア ・水圧系機器 ・スクリュー ・電気系統部品 ・配管 ・回転継手 ・軸番 |
| 化学機器 | ・耐摩耗性 ・耐食性 ・耐薬品性 ・耐変色性皮膜の均一性(寸法精度) |
・タンク ・ポンプ ・フィルター ・熱交換装置 ・スプレーノズル ・配管 ・バルブ |
| 電気モーター | ・耐摩耗性 ・耐食性 |
・変速シャフト ・回転部品 |
| 印刷 | ・耐摩耗性 ・耐食性 ・皮膜の均一性(寸法精度) |
・コピーロール |
| 石油採掘 | ・耐摩耗性 ・耐食性 |
・ドリル ・配管 |
| 軍事関連 | ・耐摩耗性 ・耐食性 ・皮膜の均一性(寸法精度) |
・ヒューズ ・迫撃砲起爆装置 ・鏡 ・バルブ ・プラグ |
| 織物 | ・耐摩耗性 ・耐食性 ・離型性 |
・ワイヤー ・スピナレット |
| 電気 | ・耐摩耗性 ・耐食性 ・硬さ ・はんだ濡れ性 ・強磁性 ・非磁性 ・導電性 ・電気抵抗 ・物感防止性 ・耐熱性 |
・ヒートシンク ・端子 ・リードワイヤー ・トランジスタ ・水晶発振子 ・リードフレーム ・コンデンサ ・ITO ・ICパッケージ ・セラミックス基盤 / 部品 ・Au下地めっき ・ハーメチックシール |
| 樹脂 | ・耐摩耗性 ・防食性 ・離型性 |
・プラスチック成型型 ・成型型金型 ・射出成型型シリンダー ・携帯電話筐体 |
| その他 | ・耐食性 ・装飾 ・光や熱の選択 ・吸収性など |
・釣り針 ・編針 ・ボタン ・板状電熱合金 ・水素化金合金 ・焼結磁石 ・CRT画面保護膜 ・光学部品 ・光通信の伝送路 ・太陽熱発電熱のコレクター |
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