無電解ニッケルめっきの耐食性・耐摩耗性はどのくらいですか?
無電解ニッケルめっきを選ぶ理由として、「耐食性」や「耐摩耗性」が挙げられることが多いです。しかしその性能は、リン含有量・膜厚・熱処理の有無によって大きく変わります。数値と用途の目安を解説します。
耐食性:リン含有量と膜厚が決め手
無電解ニッケルめっきの耐食性は、高リンタイプ(P: 11〜13%)が最も優れています。
高リンタイプはアモルファス(非晶質)構造のため結晶粒界がなく、そこから腐食が浸入するリスクが低いのが理由です。
塩水噴霧試験(SST)の目安
| タイプ | 膜厚 | 塩水噴霧試験耐久時間(目安) |
|---|---|---|
| 高リン(P: 11〜13%) | 25μm | 500時間以上 |
| 中リン(P: 5〜10%) | 25μm | 200〜400時間 |
| 低リン(P: 1〜4%) | 25μm | 100〜200時間 |
※素材・前処理条件・ピンホールの有無によって大きく変わります。
耐食性を高めるポイント
- 膜厚を厚くする:ピンホールが減少し耐食性が向上する
- 前処理を徹底する:素材表面の清浄度がピンホール発生に影響する
- 高リンタイプを選ぶ:耐食性を最優先とする場合の選択
「塩水噴霧試験の基準をクリアできない」「耐食性を改善したい」 膜厚・リン濃度・前処理の見直しで改善できる場合があります。 まずご相談ください。 耐食性の改善を相談する
耐摩耗性:熱処理後の硬度が性能を決める
無電解ニッケルめっきの耐摩耗性は硬度に比例します。
析出状態(熱処理なし)の硬度はHV 500〜700程度ですが、熱処理(180〜400℃)を施すと中リンタイプでHV 900〜950まで上昇します。これは硬質クロムめっき(HV 800〜1000)に匹敵する硬度です。
硬度と摩耗の関係
| 状態 | 硬度(目安) | 相当する処理 |
|---|---|---|
| 析出状態(低リン) | HV 700 | — |
| 析出状態(中リン) | HV 550〜600 | — |
| 熱処理後(中リン) | HV 900〜950 | 硬質クロムめっきに相当 |
| 硬質クロムめっき | HV 800〜1000 | 比較参考値 |
耐摩耗性を高めるポイント
- 中リンタイプ+熱処理:最も高い耐摩耗性が得られる
- 膜厚を確保する:摩耗代を見越した膜厚設計が必要
- 均一膜厚:電気めっきでは薄くなりがちな複雑形状にも均一に皮膜が形成される
耐食性と耐摩耗性のどちらを優先するか
| 優先特性 | 推奨タイプ・条件 |
|---|---|
| 耐食性を最優先 | 高リン(P: 11〜13%)+厚膜 |
| 耐摩耗性を最優先 | 中リン(P: 5〜10%)+熱処理 |
| 両立させたい | 中リン+熱処理(耐摩耗)の後に防錆コーティング |
耐食性と耐摩耗性の両立は、1つの処理条件で完全に最適化することが難しい場合があります。使用環境・要求特性を整理したうえで、最適な処理仕様をご提案します。
関連:無電解ニッケルのリン濃度(高・中・低)による特性の違いは?
関連:無電解ニッケルめっき後の熱処理(ベーキング)で硬度はどう変わりますか?(まもなく公開)
お問い合わせ
「塩水噴霧試験の基準時間をクリアしたい」「摺動部品の摩耗を改善したい」など、具体的な要求性能がある場合は、用途・使用環境・現在の仕様をお知らせください。最適な処理条件をご提案します。

